知られざるオランダの文化

まだ出会ったことのない文化を覗いてみませんか?

歌詞 Brabant - Guus Meeuwis オランダ語(5)

Goedenavond.

こんばんはカツワです。

今日はオランダ南部の曲を紹介します♪

 

オランダ随一の美声の持ち主である

Guus Meeuwis(フース・メーウィス)の名曲

Brabant(ブラバント)です。

 

ブラバンとは、ベルギーの中部・北部〜オランダ南部にかけての地域の呼び名。

ベルギーとオランダは昔は一つの国だったため、現在では地域が国境をまたぐ形になっています。

そしてオランダの中に、Noord-Brabant(ノールト・ブラバント/北ブラバント)という州があります。

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Wikipediaより https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Noord-Brabant_in_the_Netherlands.svg

Guus Meeuwis はこの州の中の小さな村の出身でした。

彼はロシアモスクワ滞在中に、故郷を懐かしく思う歌をブラバント」というタイトルで書きます。

曲が2003年にリリースされると、もちろんノールト・ブラバント州を中心にヒットし、現在でも州歌(非公式)として親しまれています(笑)

まずはお聞きいただきましょう!


Guus Meeuwis - Brabant (Audio Only)

ブラバント」

 

1番]

頭にかぶった帽子

襟を立てて

ここは凍てつくように寒い

だが幸いにも空気は乾いている

 

ここでは日は短く

夜が早く始まる

人々は無愛想で

飲み屋が一つあるだけ

 

暗い一日の後で

ホテルに向かって歩いていると

私のポケットの奥底に

家の鍵の感触がある

 

[サビ]

私はここで一人歩く

静かすぎる街で

郷愁に駆られたことは

実際のところ一度もない

だが人々が、彼らが眠りにつき

世界が閉じる

その時私はブラバントに思いを馳せる

なぜならそこにまだ明かりが灯っているから

 

2番]

ここでは地元のカフェのような

ぬくもりが恋しい

柔らかい”G”の発音を

する人たちとのやりとりも

 

訳もなく何にでもつけられる

小言さえ恋しくなる

フリジア人のように、ただ人々が

ブラバントを誇りに思っていてくれれば

 

太陽いっぱいの南で

私はあなたと暮らしている

それが、私がブラバント人を

愛している理由だよ

 

[サビ]

私はここで一人歩く

静かすぎる街で

郷愁に駆られたことは

実際のところ一度もない

だが人々、彼らは眠りにつき

世界が閉じる

その時私はブラバントに思いを馳せる

なぜならそこにまだ明かりが灯っているから

 

Bメロ]

ペールとケンペン、そしてメイェレイ

だがブラバントで最も素晴らしいのは君、そう君だよ

 

[サビ]

私はここで一人歩く

静かすぎる街で

郷愁に駆られたことは

実際のところ一度もない

だが人々は、彼らは眠りにつき

世界が閉じる

その時私はブラバントに思いを馳せる

なぜならそこにまだ明かりが灯っているから

(繰り返し)

 

その時私はブラバントに思いを馳せる

なぜならそこにまだ明かりが灯っているから

(繰り返し)

Guus Meeuwis – Brabant Lyrics | Genius Lyrics

 

暖かい故郷を思う気持ちが現れている曲でしたね。

歌詞についていくつか補足します。

まず、サビの最後のフレーズ

en dan denk ik aan Brabant

want daar brandt nog licht

その時私はブラバンに思いを馳せる

なぜならそこにまだ明かりが灯っているから

ブラバントとブラント=branden(燃える)の三人称単数形で、韻を踏んでいるのがわかります。

 

次にこちらのフレーズ

フリジア人のように、ただ人々が

ブラバンを誇りに思っていてくれれば

このフリジア人とは、オランダ北部のフリースラント州(Friesland)の人々を指します。

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Wikipediaより https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Friesland_in_the_Netherlands.svg

この地域ではオランダの第二の公用語フリジア語が話されており、オランダの中でも地域のキャラクターが強いということで、歌詞に引用されているのでしょう。

 

そしてこちらのフレーズ

柔らかい”G”の発音を

する人たちとのやりとりも

そもそも、オランダ語の"G"の発音は「ゲー」ではなく、空咳みたいな音で「へー」と言うのに近いんです。

南部に行くとそれが「ヒー」みたいなちょっと柔らかい発音になります。

ベルギーのオランダ語や、ドイツ語にも似ているかな。

このフレーズは、地元の人の喋り方を懐かしんでいる部分ということですね。

 

さらに、2番のサビ前にスネアドラムが入ると、まるで移動式遊園地かサーカスがやってきたような明るい雰囲気になりました。お気づきでしょうか?

あれはおそらく、オランダの街角によくいる、手回しや自動のオルゴール風なんじゃないかと思います。

パイプの音が愉快な雰囲気を醸し出します。

でも、たまに哀愁漂う曲を奏でているおじさんもいて、そういう退廃的な音に出くわすと私なんかはぐっときてました(笑)

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ストリート・オルガンとも呼ぶようです。なるほど。

ちなみにオランダ語で、オルゴールは orgel、オルガンも orgel (オーヘル)です。

 

そして、馴染みのない地名がいくつか出てきました。

de Peel en de Kempen, en de Meierij

ペールケンペン、そしてメイェレイ

ベルギーとオランダ、両方合わせたブラバン地域は、大まかにこれら三つのエリアに分類されるようです。

行政単位ではないし境界も厳密ではないけれど、ブラバントのどこ出身かという話になるとこれらの地域名を言うらしい。

 

色々とオランダのことを知るのにもいい題材の曲でしたね。

私は留学中、カトリックが多い南部のティルブルフ市を、カーニバルの時期に訪ねたら、すごいお祭り騒ぎで、友達とはっちゃけたのが懐かしい思い出です。

ライブが終わった後、テントの外で知らない人たちと肩を組んで円になり、右に左に揺れながらこの Brabant を大合唱しました。8分の6拍子って自然と揺れたくなります。

 

さて、おなじみのチャートにしてみました。

聞いていてちょっぴり切なくも楽しい気持ちになる曲です。

ブラバントの人々に永遠に愛されることでしょう。

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それではまた次回。Tot ziens!